Chisa

地続き

本屋を回っている時に「本を片手に、戦う勇気ではなく逃げる勇気を。」という帯の文章に目が留まった。その本は、ロシア文学を研究されている奈倉有里さんの文化の脱走兵というエッセイだった。ロシアとウクライナの戦争について多く触れられているのだけど、その中でも悲しみのゆくえと題された文章を読んで一旦読む手が止まった。社会は地続きで、今は戦争を自分ごととして考えられない人もいつかその影響が自分自身に降りかかる。無知でいることでそこに漬け込んでくる人たちがいる。生まれた悲しみは自分の心を蝕んでいくか、他人を攻撃してしまう。だからこそ、声の大きなものや大きな力に対して考えることを止めてはいけない。そういう強い意思をこの本から受け取った。そうだ、そうだった。
2022年の末に木と冬では、戦争で家を出なくちゃいけなくなったウクライナに子どもたちに向けて、世界中のアーティストの子守唄を集めたウェブサイトを作った。音楽を購入すると寄付される仕組みで、言語の違う世界中の子守唄が同じ場所に集まっている様子がまるでランタンに火を灯して暗闇に放っているように感じる。祈りの集合。今でも音楽は購入できて、サイト内で試聴もできるのでよかったら聴いてみてください。
https://kolysanki-na-biegunach.com/