Chisa

種を蒔く

山の見える土地に移住した。
田んぼの中で子ども時代を過ごした私にとって、山というのは“遠くでちょこっと顔を出しているもの”という認識だったので、木々の色の違いがわかるほどの近さの山に囲まれて暮らすのは安心感がある。ドアを開けて外に出るたびに、今日もそこにあるのかと山の所在を確認しては嬉しくなるのだった。

思い返せば昨年から今月にかけてとにかくめまぐるしく、何をそんなにばたばたしていたか遡ってみると、はじまりは受験だった。
初夏に初めての海外旅行から帰ってきて、これからどう生きていくかを考える時間が自然と増えた。自分のやりたいことに正直にならなくちゃもったいないという気持ちがどんどん大きくなって、頭の片隅にずっとあった陶芸の世界に飛び込んでみることに。まったく陶芸について知らないぶん、偏りなく幅広い知識が学べそうな学校に受験を決めて、春から陶芸学校の学生になる。
普段はうだうだしがちだけど、引越しするまでずっと追い風が吹いていてとにかく選択がはやかった。期待と不安が半分ずつ。ずっと天井を見ているばかりだった自分が新天地に立っている。これからどうなっていくんだろう。