一人旅
先週、2泊3日で一人旅へ。
なぜ一人旅なのかというと、目的地や何をするのかしないのか、全部自分で考えて選択して行動しておきたかった。たくさんのことをひとりで感じておきたかった、それが一番大きな理由でした。
漠然と夏休みらしい場所に行きたいなと考えていたら、波のない内海が見たくなり、行き先を瀬戸内海に決定。
夏のおわりに一人旅のはじまり。
なんと1日目はちょうど台風が韓国と日本の間を横断していて、飛行機で高松に着くことはできたけどその後に乗る予定だったフェリーが欠航。さっそく混乱。
気を取り直して、勢いで倉敷に行くことに。
瀬戸大橋をマリンライナーで渡るという思わぬイベントが!左右どちらを向いても瀬戸内海が広がっていて私はものすごく浮かれてずっと写真や動画を撮っていたのだけど、平日昼間の車内は地元の人が多く、みんなこの景色が日常のようで見向きもしていなかった。そういう地元の人の当たり前を、目の当たりにするとうれしくなる。
倉敷は古い建物が多く、洋のテイストが混ざった不思議なデザインをたくさん見ることができた。
旧大原邸(大原美術館やいろいろな会社を作った有名な実業家の家)を居合わせたマダムと一緒に見て回ったのだけど、展示されていたブローチを見て、これ私の家にも同じものがあるわ!と仰っていて何者なのか気になった。きっと由緒正しい家柄の方だったんだろうな。
宿は香川の高松のゲストハウス。旅好き宿主がカラッとした対応をしてくれて心地が良い。小さな子供さんがふたり、照れながら挨拶をしてくれた。おすすめしてもらった、教えてもらわないと絶対にひとりで扉を開けられないタイプのお店で夕食。中は常連のお客でいっぱい。なっちゃんの愛称で親しまれている若い女性がひとりで継いで切り盛りしているそうで、とにかく笑顔が見ているだけでパワーがもらえて、常連になる気持ちがよくわかる。両隣の仕事終わりの方々との会話はほとんど覚えていないけどたくさん笑っていい夜になった。
2日目
やっとフェリーに乗ることができたのでついに直島へ。
この、波のないここの海でしか見ることができない景色。これが見たかったんだ〜。
地中美術館は安藤忠雄さんの建築で、やはりコンクリート。島の自然の中にコンクリートの建物が立っている風景はなんというか、遺跡のような、研究所のような、、空気が少しピンと張っていたように思う。
モネの部屋は特に印象的で、モネの作品はもちろんなんだけど、床に使われている大理石がとても良くて… 小さな角の取れた四角い大理石が70万個も敷き詰められている。写真撮影が不可なので床の写真のポストカードを購入した。ミュージアムショップに床の写真のポストカードがあるということはやっぱり虜になる人がけっこういるのだろう。一粒ください。
直島で印象に残ったのは家プロジェクトの「南寺」これまた安藤忠雄さん。
多くを書いてしまうと驚きが減ってしまうので事前に調べず行ったほうがよさそう。普段の生活では気づけないレベルの人間の視るという力を体感。
他にも杉本博司ギャラリーで作品を観ながらお抹茶とお菓子を食べたりしました。
3日目
最終日は豊島。
豊島までは高松からだと高速船しか出ておらず、30分で到着。水飛沫が飛んで迫力があった。豊島では自転車移動が主流で、直島に比べると自然が手入れされずにそのまま残っている。
豊島は湧水があるので、稲作ができるそう。棚田の風景も綺麗だった。きっともう少ししたら刈られるはず。
今回の一人旅でいくつか美術館やアート作品を見て回ったけれど、豊島美術館は群を抜いてよかったです。建物の外観と内装を雑誌などで見て知っていたくらいの知識だったんだけど、中はああなっているとは…
たくさんの人たちが静かにその場で何かを感じたり考えたりしていたんだろうけど、あの瞬間は誰もがひとりになって、今ここに在るだけのものになってるんだと思った。生き物として呼吸をしているような、いや私は生まれたときから生き物なんだけどそうじゃなくって… うまく表現できずにもどかしいけど多分言葉にしなくていい次元のこと。泣いて、横になって30分くらい美術館の中で寝た。
あまりにも感動したので、写真集を買って帰った。(帰りの飛行機で重量オーバーになったけど本は死守!)
豊島での食事はARUEIで。名前は豊島の家浦という地名を逆さにしたものだと思う。
地中海料理がベースのレストラン。
スープ、前菜、メインのパスタと続き、どれもが初めての味。デザートも追加。
驚きを隠せないのでとりあえず部屋の隅の天井を見上げてばかりいた。美味しすぎる… こんなに複雑な味をどうやって生み出しているのか、日々どんなものに触れているのか。
この味を共有したいから、次はだれかと一緒に行こう。
いつだってあの場所に水が流れているんだと考えるだけで本当に心が透き通る。
なんでもそう、私の日常風景も誰かの非日常。そう思うだけで少しだけ日々が光って見えるし、帰宅した後も訪れた場所にはいつものように時間が流れて、息をしている。私の日常での拠り所になる。
旅行中、なんで旅をするのかと考えてみていた。
もしかすると、知らない人の日常にそっと入り込んで持ち帰り、自分の日常の中で思いを馳せたいのかもしれない。そんな記憶が増えてよかった。また行きます。