Shinya

庭と音楽と夕暮れ

千葉県佐倉市で行われた宮内優里さんのイベント「庭と音楽と夕暮れ」。毎年行われているというけれど存在を知ったのは今年で、「久しぶりに音楽を聴きに行こう」と行ってみた。

まず、旧堀田邸の庭園で行われるというだけで気持ちいいだろうと思った。一度、観光に行ったことがある。美しい磨りガラスの向こう側に広がる庭園が美しかったのを覚えている。案の定会場は広々としていて、芝生の上にゆったりスペースがとられていた。シートを敷いて寝転ぶ家族や、うしろの広場で遊ぶ子どもたち。宮内さんは「子どもの声も音楽の一部」と言って、みんながおしゃべりしたり出歩いたりすることをおすすめしていた。この一言がとてもよく、それ以降みんなが安心して楽しんでいることがわかった。

このやさしくて自然体な感じは宮内さんの音楽にも表れている。SoundCloudで配信している「Yachimata」シリーズには、宮内さんが住んでいる場所でフィールドレコーディングした音が入っていて、鳥の声や蛙の鳴き声が聞こえる。三方を田んぼに囲まれた家で育ったので、蛙の鳴き声を聞くとすごく落ち着くのだ。日々の生活に寄り添ってくれる音楽だと思っていて、そのためか宮内さんの作った音楽はラジオのBGMとしてもよく流れる。

ここからはすこし音楽の話。
宮内さんのワークショップに参加したことがある。毎回一組ということで応募メールを00分ジャストで送信したら参加できた。宮内さんはリサイクルショップで集めたという金属のものや、陶器のもの、本や工具などを持っていて、それらを使って作曲をしてみるというワークショップだった。ミュージシャンはたくさんの機材を駆使して曲を作っているのだろうと思っていた。けれど、目の前に現れたのはどこにでもあるオブジェクトたち。これらが出す音は音として認識していなかったけど、たしかにこれらは音が出る。自分が好きな音を出す物を選んで、マイクで録音していく。身の回りの物で音楽を作るというプロセスが斬新だった。

すごい機器を使ってたくさん音を重ねて音楽を作ることもできるけど、日々の風景の中から取り出される音を組み合わせて新しい音楽を作ることもまた違った楽しさがあるのだと知った。作品を作る素材はごく身近にありふれていて、それを取り出して組み合わせて作品を作ることは、案外かんたんにできるのだ。誰もが生活をする日常で出会うものが素材であるからこそ、誰の生活にも入り込んでいける共通性があるのかもしれないとも思う。

ライブの話に戻る。
ライブにはシンガーソングライターの小島ケイタニーラブさんも登場して、思わずくすっとしてしまうような歌詞の歌を。自然体でかっこつけず、親しみやすさの中で組み上げていくライブ。前に出るとついついカッコつけてしまいそうだけど、このおふたりにはそんな感じがなく、優しい。多幸感とはこのことか。外で音楽を聴く久しぶりの機会に浸った。いい夕暮れの日だった。

落花生のマラカス。宮内さんが作曲に使っているものと同じ。