Chisa

落ち着いて眠るためにスマホで麦畑の音を聴くことがあるんだけれど、麦が風に揺れて擦れる音というのは波音に似ていて、夜中に友達と突然海へ行ったことを思い出した。

何がきっかけで行こうとなったんだっけ、何年も前だから忘れちゃったな。覚えているのは、海に向かって立っているはずなのに真っ暗闇で何も見えなくて、唸り声のような風と波音だけが聴こえていたこと。身体も魂もすべて暗い海に吸い込まれていく感覚が怖くて、お互いが近くにいるか確かめるために大声を出しながら会話をしたこと。

どこまでが本当か自分でももうわからない、半分夢みたいな思い出。