そこはおひとりでやられているカフェだった。
テーブルは3つ。私たちが通されたわりと大きめのテーブルの他は、ひとり用の小さめの席が2つ。奥にもテーブルがあったけれど、今は使っていないようだった。先客はコーヒーを飲みながら本を読んでいて、長い時間滞在しているようだった。
注文が済んだあと、お店の方はキッチンに戻り、私は窓の外を眺める。先ほどまで雨が降っていたけれど、外を歩く人たちは傘をさしていない。今は止んでいるのだろうか。お店の前を歩く人と時々目が合う。そのたびに向こう側の人は目を逸らす。
店内は、誰も大きな音を立てずに、息を潜めているかのような沈黙が続く。
それぞれが、それぞれのことに集中している。
コーヒーをドリップしているお店の方、読書を続ける先客の方。
私の足元には木馬の乗り物。席に案内された時に「小さい頃、うちにも同じものがありました」と言ったら、笑って「いつもは外の看板のところに出しているんですけど、今日は雨なので中にしまっているんです」と教えてくれた。
ジャズのピアノが心地いい。曲の終わりに拍手が入り、それもまたいい。
東京にいるはずなのに、違う世界にいるみたいだった。